無料ってすばらしい
今となってむかーしむかーしのこと。当時小学生だった私、周囲と同じ趣味は嫌だ〜!と思春期まっさかりのお年頃だったせいでしょうか、普通のCDショップでは絶対に取り扱いがないインディーズ歌手のCDを買おうとしておりました。
そのため○ロンブックスしか取扱店がなく、しかも辺鄙なところに住んでおりましたので、店舗で買うという選択肢はハナからありません。(あとメロ○ブックスがどんな店か当時の私は知る由もなく)
幸い通販がありましたので、それを利用しようと喜び勇んだのもつかの間。当時クレジットカードを持っているわけがないので代引手数料300円、そしてなんと送料1000円。
あの……買おうとしているCD500円なんですけど。
しかしど〜してもほしかった私は、泣く泣くなけなしのお小遣いをはたいて1300円の送料等を払って500円のミニアルバムを購入したのでした。金額状は本体価格の方がおまけという悲しみを背負いつつも、ほかの店で取り扱いがない上にいつ在庫が切れるか分からないという仕様でしたので、血の涙を飲んでの決断であります。
これ、20年以上前の話でございます。メロ○ブックス、通販で今も1000円とってるのかな……?
無料ビジネスについて
無料のサービスを連想せよと言われると、おそらく人によって様々でしょう。シャンプーの試供品、ネットフリックスの一ヶ月無料体験、街頭で受け取るポケットティッシュなどなど。一つ一つ上げていってはきりがありません。
本書はそういった〈無料〉から生み出されるビジネスモデルについて論じた本です。その中でも特にデジタル経済に焦点を当て、デジタルのものは遅かれ早かれ無料になる、アトム(モノ)も無料になりたがるが、力強い足取りではない、などの10の法則を説いております。
無料のビジネスっていろいろあるけれど、どうやって利益を生んでいるのか?と好奇心を持つ方もいらっしゃれば、いやいや、そもそも無料のサービスなんてうさんくさいし、けしからん!と嫌煙する方もいらっしゃると思いますが、どちらにとっても興味深い内容だと思います。なるほど、と腑に落ちる内容も多いはず。
実は、この本少し古い(2009年アメリカで出版)のですが、内容に古さは感じません。この本の中で、グーグルやアマゾンの例が数多く取りあげられております。GメールやYouTube、アマゾンのネットショッピング、全く使わない人は希少なのではありませんか? まだまだ現役どころか、この本が執筆された頃よりも一層成長しており、もはや生活インフラと呼んでも差し支えないほどに浸透しているように思います。
ほかにも、2009年時点になかった無料のビジネスは枚挙に暇がありません。本書ではスカイプが無料の通話ツールとしてあげられていましたが、今はzoomやLINEが主流でしょう。音楽はCDで買うよりも配信で聞くほうが遙かに多い時代ですし、基本プレイ無料のゲームは本数もプレイ人口も2009年の比ではないでしょう。
無料のビジネスが今後一層激化していく、という著者の予言は間違いなく当たっていると言ってもいいでしょう。
今でも電子書籍としてダウンロード可能ですので、興味がある方は是非ご一読を。わりと分厚い本だし、翻訳の読みづらさは多少ありますが、耐えて読む価値はあります
今、この本を読む理由
さて、この本を単なる予言が当たった本として読むだけではなく、更に今後十年を占う本として読んでもおもしろいと思います。2009年から2023年の間に様々なサービスが出てきましたが、さてその次は? と考えてみるのです。
たとえば、10年前はスカイプが友人や家族間の通話でよく用いられておりました。当時はそれでだいたい満足していました。ときどき勝手に通話が切れることもあったけれど、無料だしかけ直せばいいだけ。ビジネスでは使わないし別にいっかと。
しかし、今はスカイプがお世辞にも流行しているとは言えません。友人家族間では大体ラインを使うでしょうし、ビジネスの現場ではおそらくズームを使うケースが圧倒的でしょう。他にも用途に合わせて通話アプリを使い分けている方も多いのではないでしょうか。
で、この十年の間でアプリの変遷とともに何が変わったか? 通信速度の向上、安定によりテレビ電話がずっと身近になりましたね。スカイプ全盛期は音声だけあれば十分と長らく思っていましたが、たとえば遠く離れた両親やすぐに成長する小さな子供相手なら、様子をうかがうついでに顔を見て話をしたいし、ビジネスのWEB会議や講演で音声だけというのはやりづらいし、画面共有が必要な場面があります。
何度か使ってみると、テレビ電話の需要は確かにあるんだなあと実感しました。でも無料のサービスじゃなかったら使わなかったし、テレビ電話の需要に気付くことはなかった。
電話の次は、テレビ電話が無料のサービスにより普及しました。ではテレビ電話の次は?
答え。メタバース、と思います。
ニュースでちょくちょくメタバース取りあげられいますね。「なんで仮想世界まで立ち上げてコミュニケーションとる必要あるの? 費用の無駄じゃないの? そもそも、どこに向けた需要?」と感じて、なぜこんなにもてはやされているのかしっくりこなかったのですが、今考えると、この二つの疑問は解消されます。
費用の無駄に関しては「デジタルのモノは遅かれ早かれ無料になる」し、どこに向けた需要なのかという問いに関しては「フリーは別のモノの価値を高める」という答えになります。無料の体験により新たな付加価値が生み出される、ということ。
つまり、メタバースがニュースの中で珍しがられているうちはまだまだ広がらないというわけです。作成コストが無料と見なせるほど限界まで下がり、そこでメタバースを体験した人が「これは便利だ」と気づき、その輪が広がっていく……という循環がなければ、普及しないと予想される。
まだまだ掛かりそうですね。メタバースが普及する前に、ひょっとしたら別のサービスに先を越されてしまうかも。
というわけで、フリー〈無料〉からお金を生み出す新戦略についてレビューしてみました。
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